小人閑居して不善を為す chapter3

一介のプレイヤーからハイスコアラー、そしてゲームセンターの中の人を経てアーケードゲームと関わること40年以上、その普通とはかなり異なるゲーマー人生を回顧するべく記事を綴っております。

ゲームセンター回顧録 セガの中の人の時代 セガワールド生桑 その3

さて店長としての職責ですが、これまでは複数社員が常駐する店舗だったため社員間で職務を割り振りしていたのに対し、セガワールド生桑では常駐社員は店長のみとなり、また契約社員も存在しなかったため、社員として必要とされる職務は全て自分が対応する必要がありました。

 

職務はおおよそ以下の内容に分類されます。

 

①金銭管理(集金業務、金融機関への入金、両替機対応)

②建物オーナーや近隣テナントとの折衝

➂スタッフ管理(シフト作成や人件費管理)

④機材(機械、基板、部品等)、在庫(景品等)管理

 

細かい業務を含めればもっと多様になりますが、概ね上記のカテゴリーに分類されるのではないかと思います。

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セガ製高額紙幣対応両替機 DP-22000(画像はヤフオクより転載)
 

①の金銭管理ですが、事故防止の観点からセガはアルバイトスタッフに金銭を極力触らせない方針だったので、社員が全て対応します。

 

集金は定期的に実施する必要があるため、社員1人勤務の店舗は基本的に長期の休暇は取れません。

 

両替機への金銭補充等はアルバイトが対応するゲームセンター運営会社もありますが、セガはスタッフが両替機を触れるようになるためにはアルバイトランクのステップアップが必要で、それには営業所長の面談を要するためそこまで到達している人数はさほど多くなく、結局は社員が対応していた店舗が圧倒的に多かったと思います。

この両替機対応が日常業務としては最も厄介で、勤務終了後やオフの日といった社員不在時にトラブルが発生した場合、お客様を待たせるわけにはいかないためスタッフでも扱える少額の両替金を用意してお客様へお渡しするのですが、最終的に社員が店舗へ出向いて両替機を復旧させなければなりません。

千円紙幣を百円硬貨へ両替するだけの機械のトラブルであれば、店内に他の両替機があるためそちらで代替してもらうのですが、万券や五千円紙幣対応の両替機は台数が少なく長時間停止させてしまうと影響が大きいため、トラブった場合はほぼ確実に携帯電話が鳴ります。何度呼び出されて店舗へ向かわざるを得なかったかはあまり考えたくありません。

 

両替機の内部は定期的に確認するのですが、退勤前やオフの前日は呼び出されることを防ぐため硬貨や紙幣の残量をチェック、特に排出口への紙幣つまりが最も多いトラブルのため、極端に皺が多い紙幣はあらかじめ取り除いたり、紙幣の量が多すぎても詰まる原因となるため需要を予測して適切な量を投入しておくといった努力が必要となります。それでも完全には防げないのですが。

 

また、時折現れる「両替金額が一致しない」との申し入れの対応は更に面倒なことになります。

紙幣→硬貨の両替では両替金差異の申し入れは殆ど発生しないのですが、高額紙幣両替の場合、「五千円紙幣を投入しているのに万券を投入したつもりの方」「高額紙幣を両替したのに硬貨しか受け取らず、千円紙幣を取り忘れた方」が定期的に現れます。

大抵は「お客様の勘違い、払い出し紙幣の取り忘れ」をご説明してお引き取り願うのですが、稀に納得行かないという方がいると、該当両替機の中身金銭を全て取り出し、管理帳簿上の両替機内投入金額と差異が無いかを確認します。両替なので内部の金額が変化することはありませんから(メダル貸出機兼用両替機の場合は当日の貸し出し売り上げを差し引いて確認)、確認の結果内部金額に変化がないことをお伝えしてお引き取り頂きます。

まだお客様の勘違いであれば良いのですが、詐欺行為でわざとクレームを付けてくる輩もいるため、面倒ですがトラブル時の両替機中身の確認は行わざるを得ないのです。

 

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2020年7月24日撮影

 

そして➂の「店舗スタッフ」に関する業務。

 

サービス業全般に言えることですが、社員だけでは日常の店舗業務は廻せないため、アルバイトスタッフの力を借りることになります。

限られた人件費枠の中でスタッフの希望を反映しつつ店舗勤務シフトを作成する...サービス業の現業を経験すれば誰もが通る道ではないかと思います。

在籍スタッフ人数と各スタッフの希望(勤務日数や給与額)が上手く嚙み合っていれば、シフト作成はある程度ルーティン作業に近くなり頭を悩ますことはありませんが、おおよそどの店舗もそこまで余裕のある人員を抱えている訳ではないため、人数、スタッフの希望のどちらかが狂うとたちまち人手不足に直面することとなります。

そうなるとスタッフの穴を社員が埋めなければならないため、公休が取得できない、開店から閉店までの通し勤務を強いられるといった状況が多発し社員が極度に疲弊してしまう光景が時折発生しており、何としてもそれだけは避けたいと思っていました。

 

生桑は総勢10名程度のスタッフで店舗を廻しており、学生スタッフの卒業時期などで一時的に不足することはあったもののスタッフが明らかに足りていないということはそれ程ありませんでした。

ゲームファンをある程度店舗に囲い込んでいると、その中で結構スタッフになってくれる方がいるので助かるんですよね。また採用したスタッフは大抵真面目に仕事に取り組んでくれたのでそこは恵まれていたと思います。

 

 

そうして初めての店長業務も大過なく2年が経過しました。

1年程度で異動を重ねる社員も多い中、2年は当時としては比較的長い在籍期間だったようです。ガルボと合わせて3年半程度過ごした三重県四日市市の次に赴任地として指定されたのは長野県上田市でした。

 

あれ?セガの東海地区は東海3県(愛知、岐阜、三重)および北陸3県(福井、石川、富山)だったのでは?

 

そこで長野行きを命ぜられた経緯を含め、次回からはセガにおけるの最後の店舗となる「セガワールド上田」勤務時代を取り上げます。