レトロゲームに関する情報が花盛りの昨今ですが、メディアやSNSが取り上げている情報といえば、当然と言えば当然ですがゲーム内容そのもののレビュー、プログラマーや作曲者などの開発者視点のものが殆どで、特にアーケードゲームにおけるプレイフィールドである「ゲームセンター」に関する記事や情報は非常に少ないのが現状です。
ただ、特に80年~90年代にアーケードゲームをプレイしていた我々のような世代は、ゲームそのものに惹かれてプレイしたのは勿論ですが、それが切っ掛けとなり日頃から通い詰め、プレイヤー同士が交流するゲームセンターという「場所」に惹かれるようになっていたのではないかと思います。
その頃の空気感を少しでも残すため、かつてのゲームセンターの回顧録をこのブログにまとめたりしていますが、いかんせん自身が通った範囲でしか詳細な内容は記載出来ません。何か普遍的なものを残せないか…と思い付いたのが、かつての雑誌掲載ハイスコア集計店舗をマッピングすることでした。
内容としては、マイコンベーシックマガジン、ゲーメスト、アルカディア誌等に掲載されていたハイスコア集計店舗の位置を、記載されている住所ベースでGOOGLE MAP上にプロットするだけの作業なのですが、以下の点で意義があるのではないかと思っています。
・店舗住所が記載されているため、過去にそこに店舗が確実に存在したことの証になる。また現在その場所がどうなっているのかを確認出来るし、店舗は無くてもその場所に行けば記憶が繋がることがある。
・「店舗にてハイスコアを集計する」という行為そのものがプレイヤーサイドに依拠しているため、集計していた店舗はプレイヤー寄りの運営を行っていた可能性が高い。結果として店舗のエピソードをいろいろと発掘出来る可能性がある。
そして誌面おいては、電波新聞社発行のマイコンベーシックマガジン別冊「スーパーソフトマガジン」にて「CHALLENGE HIGH SCORE!」コーナーとして1984年1月号からハイスコア集計が開始されることになるため、ここをスタート地点としてハイスコア集計店マッピングプロジェクトをスタートさせるのですが、まずはコーナー開始に関する布石について紹介したいと思います。
(スーパーソフトマガジン⦅マイコンベーシックマガジン別冊⦆1983年12月号より)
こちらは、ハイスコア集計が開始される直前の1983年12月号における「スーパーソフトマガジン」の表紙です。
1980年台前半のアーケードゲームはナムコの黄金時代。その中において1983年頭に「ゼビウス」が登場し御存知のように大ヒットを記録しますが、既に1年近くが経過した12月に刊行された雑誌付録の表紙をまだゼビウスが飾っていることで当時の影響の大きさを窺うことが出来ます。
そして、ゼビウスのヒットに付帯して同人誌「ゼビウス1000万点への解法」に代表されるゲーム攻略系のコミュニティが勃興してくるのですが、そのコミュニティが目指していた「ゲームを攻略する→ハイスコアを狙う」というモチベーションと、店舗の差別化やプレイヤーへの動機付けを目的として一部のゲームセンターでローカルで実施されていた「ハイスコアの店内掲示」が融合し、それなら全国のゲームセンターでハイスコアを争うようにしたら盛り上がるのでは?と繋がっていくことで全国誌でハイスコア集計が開始される流れが生まれたのではないかと思います。
その流れは、当時パソコン向けにナムコアーケードゲームの移植を行っていた電波新聞社(マイコンソフト)が、その関係をベースとしてゲームセンターにおけるハイスコア集計をナムコへ持ち掛けることで結実することになります。(2018年1月に開催された「ALL ABOUTベーマガ」のイベント内でそのような主旨の紹介があったと記憶しています。間違い等あればご指摘を頂きたくお願い申し上げます。)
「ALL ABOUTベーマガ」にもパネリストとして出席されていた大堀康祐氏の上記インタビューにも、ベーマガで全国ハイスコア集計開始に至る経緯が触れられています。
そして1983年12月号のスーパーソフトマガジンにおいて、初めてハイスコア集計の開始が予告されます。
(スーパーソフトマガジン⦅マイコンベーシックマガジン別冊⦆1983年12月号より)
「キャロット」という屋号はナムコが展開していたゲームセンターの名称であり、掲載が予告されている殆どの店舗がキャロットの名称を含んでいます。また屋号にキャロットの名前が入っていない3店についてもナムコ系店舗であることが確認されているため、掲載が予告された27店全てがナムコの関係しているゲームセンターとなっています。
このように、チャレンジハイスコアコーナーの最初は電波新聞社とナムコのタッグにてスタートしていることがお分かり頂けるのではないかと思います。
この集計予告を経て、1984年1月号の別冊から実際のハイスコア掲載がされるようになります。マッピングは次回の集計開始からスタートすることにします。
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